107. お大師さんと三躰の薬師如来

 

前回は『残酷舌鼻物語』として、馬路村の七人ミサキをご紹介しました。

「ベライケさま」「ハナジョーリさま」の近くにあり、目印にさせてもらった金林寺(こんりんじ)。

このお寺にも伝説がありました。

みんな大好き弘法大師さま(←個人の感想です)の登場です!


金林寺


全国にあるのかもしれませんが、四国にも弘法大師の伝説がよく残っています。

四国八十八ケ所もありますし、「お大師さん」は今も人気があるなと感じます。

地面にトンっと杖をつくと泉が湧いた伝説が多く、一夜の宿を貸さなかったら芋が食べられない芋に変わった話も各地にちらほら。

それにしても1200年もの間、「お大師さんの水」と感謝されながら伝えられるのってすごいですよね。




で、今回のお話。

まず、弘法大師が室戸に金剛頂寺(通称・西寺)を建立するときに、馬路村に用材を求めたところから話が始まります。

材木をイカダに組んで安田川に流したところ、夜中に山や川が鳴動して魔性の障りが!
加治祈祷して魔性を退治します。

そして不動尊を彫って川に浮かべたところ、流れとは逆の方向へ。

止まったところが瀬切というところだったので、瀬切不動尊と名付けます。

今では西寺の宝物のひとつなのだそうです。




お大師さん、仏像も彫れるし魔性も退治できるのですね。




そして材木は中山というところまで流れたので、薬師如来像などを彫って安置したのが安田町の北寺なのだそうです。

このとき、同じ材木から三躰の薬師如来が作られたといわれていて、この北寺、同じく安田町の法禅寺、そして馬路村の金林寺のご本尊になり、霊験あらたかに尊崇されたということです。


北寺


安田町の北寺には、薬師如来像はじめ国指定の重要文化財の仏像が九躰あります。

事前予約しておけば見せてもらえますよ。

見応えあります。

安田町の法禅寺は廃寺になってしまったそうで、跡地に薬師堂が建てられています。


北寺の宝物殿


馬路村の金林寺の薬師堂は、とてもりっぱな建物。

バランスが気持ち良いといいますか。

こちらも国の重要文化財なのだそうです。

大同二年に弘法大師が一夜で建立したという言い伝えもある薬師堂。

でもこのお堂はもう少し新しいものでしょうか。

弘法大師は、一夜でお堂を立てたという話にも納得できるくらいの超人だったのでしょうね。


金林寺の薬師堂


三躰の薬師如来には、別の説もあります。

弘法大師が24歳のとき(まだ空海のころですね)、北川村の和田の峯に登ると南方の海岸に光を放つものが見えました。

行ってみると、田野の海岸に上がった赤木の霊木でした。

そして、この霊木で薬師如来像を三躰つくり、安田町の北寺、馬路村の金林寺、そして北川村の妙楽寺に納めたということです。

妙楽寺も廃寺になっているようです。




弘法大師が目をつけた馬路村の木材。

この辺りは、魚梁瀬(やなせ)杉という良質な木材がとれることで有名です。

林業が盛んだったころに、材木を運ぶのに使われた「インクライン」というケーブルカーが残っているんです。

水の重力で上がったり下がったりする、エコなケーブルカーであります。

なんと、これに乗れるんですわよ。

高低差50mをゆっくり運行してくれます。

上からの眺めは気持ちいい!

ちょっと得した気持ちになれました。

修行が足りないので光る霊木は見つけられませんでしたが。


インクラインの終点から見た風景


参考文献 : 『新安田文化史』『馬路村史』『高知県の歴史散歩』


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