106. 残酷鼻舌物語 〜馬路の七人ミサキ〜

 

うららかな春の一日、馬路村に行ってみました。

馬路村の特産品は柚子。

柚子ドリンク“ごっくん馬路村”と、柚子ポン酢“ゆずの村”が美味しくて有名です。

町おこしが大成功している村なのです。




そんな馬路村での目的は、七人ミサキ。

またかよ、とか思いました?そう、またですよ~

工場見学でいただいた“ごっくん馬路村”を飲みながら探索です!




見学させてもらった柚子の森加工場の西側に、金林寺(こんりんじ)というお寺があります。

どうやらお目当ての祠は、この付近にあるようです。

マップには載ってないので、ウロウロしてみます。


金林寺


今回の七人ミサキの説明をば。

400年ほど前、長宗我部元親公が台頭してきたころの戦国時代の話なのだそうです。

そのころの馬路には、馬路若狭守さんとその父龍王守さんという豪族がおったそうな。

お隣の安田を治めていたのは、安田三河守さん。

戦国の世ですからいろいろありまして、安田方が隠密を送り込んだのですが、馬路方に捕らえられてしまいます。

七人はベラ(舌)を切り取られて殺され、一人は鼻をそがれて安田に送り返されたのだそうです。

おお痛い痛い。

その後、この土地にいろいろ不思議なことが起こるので、殺した七人の霊を弔って、七人ミサキと呼んで祀るようになったということです。




というわけで、金林寺の南側の坂を少し登ると「ベライケさま」を発見。

先ほどの話で、切り取ったベラ(舌)だけを埋めて祀ったといわれています。

このベライケさまを祀ってから、祠のあるところを残して周囲が陥没して池になったといわれているそうです。

現在はコンクリートで固められています。

イボのできたときにお願をかけると治るのだとか。

お願ほどきには、川魚を池に放してあげる風があるそう。

金魚が泳いでいて、ほのぼのした景色です。


ベライケさま


それとは別に、室戸の金剛頂寺に人間に悪さをする蛇体がいたという話もあります。

弘法大師さまによって封じ込められて、金林寺の住職によってここに迎えられた、という説もあるそうですよ。

金林寺は、弘法大師さまのゆかりのお寺なのです。




「ベライケさま」からもう少しうろついていると、祠がいくつかありました。

もうひとつのお目当て「ハナジョーリさま」が、どれだかわからないぞ。

本に載っている写真と見比べながら探していると、見つけました。

山の形は、あまり変わらないものなのですね。

こちらが七人ミサキを祀っていて、“鼻そり”が訛って“ハナジョーリ”になったといわれる

「ハナジョーリさま」です。


ハナジョーリさま


その異国風の名前が気になるし、由来が残酷だし、なんやかんやで気になっていた「ハナジョーリさま」。

後日談もあるようです。

安田三河守さんは家来の仇を討つために、たった一人で馬路に来て馬路龍王守さんの家にカシキ(飯炊き)の姿で入り込みます。

三年も辛抱し、見事に復讐を遂げたということです。

安田方の者ではあったけど三河守さん本人ではなかったとか、説はいろいろあるようですが。


ハナジョーリさま


祠めぐりのあとは、馬路温泉で温まって帰路に着きましたとさ。

馬路温泉、とろみのあるお湯で気持ちいいですよー!




【七人ミサキに関するその他の記事】

◯高知県下に残る色々な七人ミサキ→『怪異!七人ミサキ』


◯お正月にまつわる七人ミサキ→『「正月女」の言い伝え』


◯比江山掃部介さんのお話→『比江山の七人ミサキ』


吉良親実さんのお話→『土佐随一の怨霊譚



参考文献 : 桂井和雄さん著『土佐の傳説』『土佐の傳説 第二集』、市原麟一郎さん著『芸西伝説さんぽ』『土佐ごりやくさん』


※はっきりとした場所を示しにくいので、金林寺を載せておきます。

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