111. この世のたごりは、わしがあの世へ

 

百日咳が流行しています。

激しく咳き込んだり、咳症状が長引いたり。

咳って体力使うので、しんどいんですよね。

家族などに咳の発作が起こっても背中をさするくらいしかできない、というのも辛い。

早く良くなるようにと願う日が続きます。




その気持ちは、昔も今も変わらないようです。

ご利益が「百日咳」や「たごり」という神さまが、高知県内あちらこちらおわします。

「たごり」とは、土佐弁で咳のこと。

咳が出るという動詞になると「たごる」になります。

今回は、「たごり」の神さまのひとつを訪ねてみることにします。




その神さまがおわすのは、奈半利町。

高知市から、車で1時間20分ほど東に行ったところにあります。

列車のごめん・なはり線の終点でもあります。

列車なら高知駅から約1時間半です。

ちょうど昨日、奈半利にすてきなゲストハウスがあるという情報を仕入れたところです。

『junos(ユノス)』さんっていうんですって。

古民家ですってよ。

『junos』さんのページはコチラ




たごりの神さまの話に戻りましょう。

その昔、勝道というお坊さんが喘息で、たごってたごって亡くなったそうです。

そして亡くなるときに、

「この世のたごりは、わしが全部あの世へ持って行ってやろう。」

と言い残したのだそうです。

「たごりで苦しむ者がいたら、わしに治してくれと願うがよい。」

と。




苦しい思いをしながら、他の人のことを思いやれるなんて。

さすがお坊さん。

頼り甲斐がありそうです。




その勝道さんのお墓が、奈半利町の中里の極楽寺というお寺にあるのです。


極楽寺


お寺の東側に墓地があり、一角に歴代住職のお墓が並んでいます。

その中に、「法印勝道」と書かれた自然石(おそらく)のお墓があります。

これが、たごりの神さまなのだそう。

昔から、咳に苦しんでいる人がお詣りすると、不思議とよくなるんだそうですよ。


たごりの神さま


そして、無事に咳が治まった時は、お願ほどきに豆腐一丁をお供えするのだそうです。

勝道さんの生前の大好物が、お豆腐だったのだそうですよ。




「この世のたごりは、わしが全部あの世に持って行ってやろう。」

いや~、かっこいい言葉を残して亡くなることに少し憧れがあるんですよね~。

高知で言えば、

「板垣死すとも自由は死せず」

と言った板垣退助もポイント高いですが、勝道さんもいいですねえ。

この時の板垣氏は、命を取り止めたんですけれども。




極楽寺の帰り道、ものすごく心惹かれる場所を見つけて寄り道。

小さな橋なのですが、渡った先に何があるのか気になって気になって。




わくわくしながら行ってみると、多気坂本神社(たけさかもとじんじゃ)でした。

県下に二十一ある延喜式内社のひとつです。

由緒ある神社に行き当たるなんて、得した気分です。

この季節は蚊が多いので、手をバタバタしながらご参拝。




多気坂本神社の小さな橋や手水鉢に、奈半利町の昔の繁栄を垣間見た気がしました。





早く、百日咳の流行が収まりますように。

経験上、手洗いとうがいは、やはり感染予防に有効だと思います。




参考文献 : 市原麟一郎さん著『土佐のごりやくさん』、土佐教育研究会国語部編『高知の伝説』

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