113. (ひざが)死ぬまでに見たい絶景

 

いやはや、木立の間をくぐり抜けるとこんな絶景が広がっているなんて。

テレビや写真で見たこともあるのに、まさかここまでとは。

360度見渡してみなければ分からない迫力。

確かに拝みたくなるような雄大さです。




今回訪れたのは、土佐清水市の竜宮神社。

足摺岬より少し西にある松尾という集落にあります。

夏休み中の子供が、絵の宿題によさげな風景を探しておりまして、のどQのぶらぶら伝説めぐりに同行することに。

前から行ってみたかったし、海のそばの神社なら景色もいいだろうと出発しました。




しかしスマホはギガが無く使い物にならず。

その上、「竜宮神社」を「竜王神社」と間違えて覚えているという大失態。

こんな遠くまで来たのに、大ピンチです!

「臼碆(うすばえ)」という地名を覚えていたのが、救いになりました。

でも、案内板にある「臼碆」の方に入っていくと、山を登る道に。

神社は磯にあるのに登るのはおかしいと引き返し、別の道から「臼碆」を目指すもやはり山道で引き返す。

果たしてたどり着けるのか。

でもどう見ても山の道しかないので、覚悟を決め進んで行きます。

そして、「竜宮神社」の鳥居を無事に見つけることができました。




駐車場に車を停めて、鳥居から続く道を歩きます。

竜宮神社まで400mですって。

そう、磯にある神社なのに山を登ってきた、という違和感をすっかり忘れて楽勝モードで歩くのどQ。

すごい落差の階段が現れてはじめて、こういうことか!と不安が押し寄せ、テンションが急降下です。

そんな初老の母を置いて、若者はぴょんぴょん進んでいくのでした。




そして、木立を抜けて目の前に広がる景色を見たとき、ただただ感動。

息を飲むとはこのことです。

これを見るためなら、あの階段もなんのその。

いやあ、これは見る価値アリですよ。




なぜこの竜宮神社が気になっていたのかというと、『漁招き』という奇祭があると聞いたからなのです。

海に向かって、女の人がスカートやら腰巻やらののすそをめくって陰部を見せる仕草をするのだとか。

なにやらセンセーショナル。

現在でも、スカートをめくりながら「大漁ーー!」と叫ぶのだそうですよ。




昔は、高知県下のあちらこちらで行われていたようです。

不漁が続くときに、漁師の女房が中心となって「マンナオシ」「漁招き」「漁祈祷」「潮まつり」などと呼ばれる漁祈願をして酒宴を開いていたのだそう。

そのときに、船に祀った船霊(ふなだま)さまや、竜宮神社のような祠の前で腰巻をちょっとめくりながら、

「漁を授けてくださったらマルゴト(全部)見せますき」

「漁をさせてくれたらコッポリ(全部)見せますきに」

などと言うのだそうです。

この場合、漁をさせるとは、たくさん魚を獲らせてくれるの意です。


沖に向かって大漁祈願するそうです


このエピソードを聞くかぎり、男の神さまを想像しませんか?

しかし、船霊さまも竜宮さんも女神らしいですよ。

なんでも女神さまの嫉妬心を煽って大漁を授けてもらうための挑発行為なのだとか。

秘所をちらつかせて海の神をいさめ、漁夫たちの豊漁とその守護を祈願していた、との説もあります。

竜宮神社、昔は土佐清水市のみならず隣の大月町からも崇拝され、参拝者が絶えなかったそうです。




茶色の岩肌と青空に、真っ赤な祠がよく映えて、絵の題材も無事ゲット。

興奮が冷めてくると、現実が戻ってきました。




ああ、あれを登らなくてはいけないのか。

『ハウルの動く城』で荒地の魔女が宮殿の階段を登るシーンみたいになりながら、帰りましたとさ。




松尾には、他にも大きくて宇宙感のあるアコウの木や、




『海老洞』という洞窟もあるので、合わせてどうぞ〜。






参考文献 : 高知県中土佐町発行『土佐のカツオ漁業史』、田辺寿男さん著『海辺ー高知の民俗写真ー』、高知新聞

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