76. 山姥さん、お邪魔しま〜す【二】〈大滝山〉

 

滝や断崖、岩などに住み、飛ぶことができるとされる山姥。

その正体に少しでも近づきたく、住居だったといわれるところを訪ねています。

山姥さんのお宅訪問、第二弾です!




今回訪ねるのは、日高村にある大滝山。

日高村は、高知市から車で30分ほどのところ。

大滝山は標高247m、ハイキングにも人気の山だそうですよ。

山伏で知られる修験道の山としても知られているそうです。




『山姥の洞穴』は中腹にあるということで、気合いを入れて登ります!

天気予報が当たらず小雨が降っていますが、負けません。

修行、修行!




口数が段々減ってきたころから、巨石が増え始めました。

『如来岩』『地蔵岩』などひとつひとつ名前が付いていました。

分かれ道ごとに案内板を付けてくれているので迷わなくてすみました。

ありがとう、日高村。




40分ほど登ったところで『山姥の洞穴』に到着。

お邪魔しま~す!

巨石の間にできた空間で、人が過ごせそうなくらいの広さはあります。

思っていたよりしっかりした洞穴でした。

憧れの秘密基地ぐらいの大きさ(個人の感想)といいますか。


山姥の洞穴


その昔、この洞穴には一人の男の子を連れた美しい女性が住んでいたそうです。

男の子は金太郎と呼ばれ、父が戦で敗れたためう乳母とともに京都から逃れてきて、大滝山に隠れ住んでいるといわれていました。

金太郎は、怪力の少年に育ちました。

里の人たちは「山姥」と呼んで、たたりを恐れて誰一人近づかなかったそうです。




一方、沖名(おきな)というところに五郎さんというお百姓のせがれが住んでいたそうです。

五郎さんは、醜男でしたが心は優しい人だったそう。

そして五郎さんは、乳母と金太郎に食べ物を届けるようになったのです。

二人は喜び、お礼として大切な刀を与えたこそうです。




そんなことが続くうちに、美しい乳母に恋してしまった五郎さん。

心をうちあけたけれど振られてしまいました。

ある時、病にふした乳母を、力づくで組み伏せようとしてしまったのです。

乳母を助けようと、金太郎は怪力を出して近くの大石を持ち上げて五郎さんにせまりました。

あわてて逃げようとした五郎さんは、崖から落ちてしまったということです。


金太郎の力石


金太郎が持ち上げて投げた大石は、『金太郎の力石』として残っています。

五郎さんが落ちた場所は『五郎が滝』と呼ばれているそうです。

五郎さんが住んでいたとされるあたりは『五郎』という地名だそうですよ。

そんな切ない話が残っているのですね。




洞穴や力石のほかに『胎内くぐり』もありました。

自然のトンネルですね。

ちょっとした冒険気分になれますよ。


胎内くぐり


実は、近くの加茂(かも)という地区にも山姥伝説があるのです。




ある日、薄汚い着物をきた白髪のお婆さんがやってきました。

一合くらいの餅米を持ってきて、「わしの餅もついてくだされ」と頼んでまわりました。

みんなが断るなか、一軒の親切なお百姓が一緒についてくれました。

不思議なことに、ついていくうちに一升の米が二升、三升と増えていきます。

お百姓は、お婆さんにお礼を言って餅をたくさん渡しました。




お婆さんは、それから毎年、年の暮れにやってきて餅をついてくれと頼みました。

それとともに貧しかったお百姓の家もお金持ちになっていったそうです。

けれど、苦労を知らない息子たちは汚いお婆さんを嫌い、ある年とうとうお百姓はお婆さんの来る前に餅つきを終わらせてしまいました。

その年から、この家の餅は増えるどころか減りはじめ、元どおりの貧乏になってしまったということです。




大滝山の山姥と同じ山姥かどうかはわかりません。

もしかしたら元気にお年を召したのかもしれません。




ついでに、大滝山の麓あたりは怪火が出るところだと牧野富太郎博士が本に書いていました。

日高村の龍石神社の巻でどうぞ→コチラ


大滝山の麓


参考文献 : 市原麟一郎さん著『土佐のお化け昔』、大滝山登り口案内板


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