このブログでも何度かお話ししてきました『七人ミサキ』。
災害や事故、水難などで亡くなった人の霊、もしくはそれを祀ったものを『七人ミサキ』と呼びます。
七人であることが特徴。
いわゆる憑きものの一つですが、海や川で不慮の死を遂げたときにいわれることが多いようです。
高知の話が有名ですが、愛媛や他のところにもあるようです。
よく言われているのは、野や川で変死した人の霊が七人で彷徨っていて、生きている誰かに取り憑きます。
取り憑いた人が死ぬと、七人のうちのひとりが成仏できるというもの。
新たに加わったメンバーと共に、また七人で彷徨うという話です。
こういう自分たちにも降りかかるかもしれない怪異はどうしても怖いですよね。
身の回りで不運なことが起きるかもしれないとき、人は回避術を作りだします。
ジンクスやおまじないですね。
例えば誰かが死ぬ夢を見たとき、他の人に話したら正夢にならないとか。
親の死に際に立ち会いたかったら、霊柩車や救急車を見たら親指を隠せとか。
恐ろしい『七人ミサキ』に回避術はないものでしょうか?
なんと、いの町にミサキ避けのお地蔵さんがおわすとのこと。
仁淀川の河原ということで行ってみました。
国道33号線沿い、いの町「紙の博物館」から仁淀川橋までの真ん中くらいのところに、土手に登る階段があります。
土手に登り仁淀川を見下ろすと河原があり、そこにおられましたよ。
夏なので野の花が咲いていて良い風景です。
近くの木陰も涼しそう。
近所の方の散歩コースなのでしょうか。
台座の割れ目に小さな花が飾られていました。
街の日常に溶け込んだお地蔵さん。
温かい気持ちになりました。
でも、昔はうっそうとした竹やぶが茂っていて、怖いところだったそうですよ。
良い風景になっててよかった~
外へ出ていて、わけのわからない病気にかかったり、不測のケガなどをすると「ミサキがついた」と騒いだのだそうです。
もう「ミサキがついた」とは言いませんし、病気やケガのときには病院へ行きます。
しかし、それが何回か続くと必ず「お祓いしてもらったら」と言う人が出てきます。
薄れてはいますが、考え方は残っているのを感じるときがあります。
日常のあちこちに現れるミサキ。
そのミサキがつくのを守ってくれるお地蔵さん、それは心強かったことでしょう。
回避術、もうひとつは大月町の話。
海で誰か亡くなったら、それが何人であっても「七人死んだ」といい、あとを誘うといわれていたそうです。
本当にこの話は、リアルタイムで聞かされてたら怖くてたまらなかったと思います。
自分もですが、家族や友人も心配。
おまじないでもなんでも頼りたくなるってものです。
こちらでは、苫(トマ)を家の戸口にかけておくのだそうです。
苫とは、菅(スゲ)や茅(カヤ)を編んだもので、舟や屋根を覆うのに使うものだそう。
ワードが知らないものばかりでピンとこない・・・
百人一首の天智天皇の歌に出てきた「トマをあらみ〜」は、この苫なんですね。
その苫の読みが『十魔』に通じるので、ミサキが避けて通るといわれていたそうです。
とても強い魔がいるぞってことなのでしょうか。
高知県下、まだまだミサキ回避術があるような気がします。
そろそろ吉良氏の七人ミサキを調べたいと思っているので、お地蔵さんに何卒何卒と手を合わせておきました。
【七人ミサキに関するその他の記事】
◯高知県下に残る色々な七人ミサキ→『怪異!七人ミサキ』
◯お正月にまつわる七人ミサキ→『「正月女」の言い伝え』
◯比江山掃部介さんのお話→『比江山の七人ミサキ』
参考文献 : 市原麟一郎さん著『伊野・春野伝説散歩』、國學院大学民俗学研究所『民俗採訪』、広辞苑
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