34. 唾、おまじないになるの巻


塩、酒、米、豆・・・

魔除けや清めのアイテムたちです。
現在は、食べ物がふんだんにあるので気にせず使っています。
でも、時々思うんです。
食べ物が貴重だった時代に、これらのものをおまじないとして使えていたのだろうかと。
まあ、ただの素朴な疑問なのですが。



そこで、ご紹介したいアイテム。
いつでも使えて、お金もかからない。
そう、それは唾です。
コロナ禍で、病気を広める厄介ものになってしまっている唾。

実は、いろんなおまじないに使われていたんですって。
そして、現在も名残りがあちらこちらに。



まずは、よく知られているところで『眉唾』という言葉。
怪しい話や、だまされてるんじゃないかという時に使います。
あれは、眉に唾を付けるとキツネやタヌキにだまされないという俗信からなんだそうです。
山道を歩く時などに、みんな付けていたんでしょうか。
現在は、ネットの中にも怪しい話がゴロゴロしています。
このブログもですか? 笑
眉に唾つけながら読んでくださいね。



古い漫画や時代劇で、相撲をとる前やケンカする時に手のひらに唾をかけるのを見たことありませんか?

見た事あるかないかが、世代で分かれそうですね。
ペッぺッとして、すり合わせる仕草。
やってやるぜ的な。
あれもおまじないなんだそうです。




どうやら、魔物は唾がお嫌いなよう。
唾を付けておくと、魔が逃げたり寄ってこないシステムみたいです。
清められるって事でいいのでしょうか。
現代の感覚では、逆に唾で汚れたように思えてしまいますが。
毒をもって毒を制す?
いや、さすがに毒ではないでしょうよ。



唾を吐くといえばラマ



広江清さん著『近世土佐妖怪資料』によると、とある娘さんが外で用を足したくなりました。
そこで、大きな岩陰で失礼させてもらいました。
すると、そこに怖いミサキがおりまして、怒らせて憑かれてしまいます。
ミサキというのは、彷徨っている怖い霊です。
寝込んでしまい、弱っていく娘さん。
村の太夫さんに相談して祓ってもらう、という話。



40年くらい前は、子供たちはそこら辺で用を足していました。
どんだけ田舎 笑
まさか、そんな怖いものがいるなんて想像もしませんでした。
今では、立ちションする男の子さえあまり見かけません。
外でするなんてありえない、という感覚のようですよ。



そんな現代でも、どうしても仕方のない時もあります。
そんな時には、唾の出番です。
まずそこに唾を吐きかけると魔がいなくなるので、安心して用が足せるのだそうですよ。



桂井和雄さん著『土佐民俗記』にも出ています。
「夜、高いところから放尿する時は、唾を吐いておかないとタヌキに化かされる」

(土佐市高岡やいの町上八川)

唾って、タヌキによく効くんですねえ。



他にも、深夜の四ツ辻には悪鬼が彷徨っているので、「えへん」と咳ばらいしたあと唾をつーつーと吐いておけば大丈夫」というおまじないもあるのだそうです。

(春野町諸木や土佐市高岡)
深夜の四ツ辻・・・なかなか怖げなシチュエーション。
四ツ辻の言い伝えを詳しく知りたい方は→『あなたの知らない四ツ辻の世界』の巻




爪を切る前に唾をつけておく。
新しい草履の裏に唾をつけておく。
そんなおまじないもあったのだそうですよ。
魔がつかないよう、悪いことがおきないようという事のようです。
そう考えると、やってやるぜと手に唾をつけるのも、勝つために魔を遠ざけておくという事なのでしょうか。




Eテレの「0655」という番組の中で流れる『トイ!トイ!トイ!』という歌があります。
実は『トイ!トイ!トイ!』も唾を吐く音で、ドイツのおまじないだと聞いたことがあります。
もともとは魔除けだったのだとか。
おお、高知でもドイツでも同じ考え方だったなんて、不思議~




昔は魔除けだった唾。
現代ではアルコール消毒で祓われる立場なのが、時代の流れで少し切ない。
年を取ってくると口元にしまりが無くなってきて、時々魔除けが垂れる事が。
無意識におまじないが出来ているのかもしれません 笑

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