昨年あたりからでしょうか、高知では盛んに餅投げが行われています。
コロナで自粛した期間の分を取り戻すかのよう。
道路が開通すれば投げる、道の駅が完成したら投げる、お祭りといえば投げる。
始まる前からみんなのテンションが上がっているので話ははずむし、帰りもみんな笑顔なので、晴れやかないい行事だなあと思います。
餅投げ、餅まき、餅拾い、餅ばい、餅ばあし
高知の中でも、いろんな呼び方があります。
『餅ばい』は、土佐弁で「奪い合い」ことを「ばい合い」と言ったりするので、そこからなのでしょう。
『餅ばあし』は、「投げる」を「ばあす」というらしいです。
もう聞いたことのない土佐弁。
「あそこに新しい家が建ちゆうけんど、いつ餅をばあすがやろうのう」
というのが正しい使い方のようです。
そう、昭和の頃は家が完成すると餅投げをするのが定番でした。
全国的には、上棟式の時にするのが一般的なのでしょうか。
当時は、今のようにビニールに入っていません。
土がついても泥がついても洗えば大丈夫、というたくましい時代。
みんな目の色を変えて拾っていたので、落ちても一瞬です。
三秒ルールはクリアしていたはず。
また大人の本気度が高く、本当に「ばい合い」。
うかうかしていたら弾き飛ばされそうな勢いでした。
まずは新築の屋根や二階から、東西南北に大きな『四方餅』という大きめの餅を投げるのだそうです。
地域によっては投げる方角の順番があったようですが、古い話なのでみんな記憶もあいまい。
大きさもまた地域によるのでしょうが、直径30cmくらいだったりしたようです。
直径30cmの餅はなかなかの大きさ。
『四方餅』を投げてから、普通の餅投げが始まるという流れだったそうですね。
家の落成で餅投げをするという話、最近は全く聞かなくなりました。
高知では少し平べったい紅白のお餅が、ひとつひとつビニールに入っています。
ビニールには赤文字で『祝』と書いてあるのが定番。
お菓子やラーメンを一緒に投げるところもあれば、商品を書いた木札を投げて後で交換するところもあるそうです。
確かに投げられたインスタントの袋麺は、いつもバラバラになっています。
年配の方の中には、餅投げの餅を縁起物ととらえる方もいるようです。
お祝いのおすそ分けしてもらうイメージなのでしょうか。
そう言われると、ちょっとパワーフード(そんな言葉あるのかな)に見えてきました。
ある日の戦利品 |
土佐市谷地にある穴地蔵さんは、穴にかかわる病に大変ご利益があるといわれています。
穴といえば、目・耳・鼻その他もろもろ、悩み多き器官ばかり。
お参りする方がたくさん訪れるお地蔵さんだそうです。
そして、旧暦の1月24日と10月24日の縁日には、ご利益を受けた方たちが自分の歳の数だけ餅を投げる習わしがあるのだそうですよ。
穴地蔵さん、見学させていただこうと行ってみたことがあるんです。
大きな穴の中にお地蔵さんがおられるそうなのですが、なぜか足がすくんでしまい穴までたどり着けませんでした。
霊感とかないんで、ただビビってしまっただけなんですが。
腰抜けって、本当に困りますわね。
でも、ちょっと興味わいたりしますでしょう?
ご利益ありそうでしょう?
また願い事ができたときに、正しく再訪したいと思います。
餅投げは楽しいのですが、ケガだけは注意です。
上ばかり見ていると餅が顔に直撃することもあるので、下を向いて落ちてくる餅を拾う作戦もおすすめですよ。
20年前に参加した餅投げは、前の方にいる人たちを座らせていました。
今も前の方は座って、後ろの方は立っている場合もあるようです。
奪い合ってた時代より、だいぶん平和になった気がします。
餅投げといえば、漫画の『ばらかもん』のひと場面を思い出します。
自分の人生と照らし合わせた主人公が、もし餅が拾えなかったらどうしたらいいか地元のおばあちゃんに聞くと、
「そんときはな、どうぞお先に。
人に取られたものを欲しがる必要はなか。
諦める必要もなか。
譲ってやってもっと大きな餅ば狙え。
譲ることと拾うことを止めなければ、ホレ、この通り」
と、たくさん餅の入った袋を見せてくれるのです。
餅投げのお供には、やはりこの名言ですね~
参考文献 : 穴地蔵さん説明板、ヨシノサツキさん著『ばらかもん』
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