39. 大川村の『おんびき神様』

 

前回は、ヒキガエルが家を守ってくれる縁起物であるという話でした。

そして、別名のひとつ『クツヒキ』が、当時の百日咳の呼び名『クツヒキタゴリ』と同音だったためか、ヒキガエルに似た石を百日咳の神として信仰する習俗があった───
ここまでが前回のあらすじ。
よかったら読んでみてね→『名前がありすぎるカエルの話』


実際『オンビキ岩』や『オクツ神』として信仰された大きな岩が、県内各地にあったそうです。
南国市前ノ浜の伊都多(いずた)神社の北隣にも、『オクツサマ』と呼ばれ百日咳の信仰があった岩があるというので行ってみました。
でも、見ただけでは分からず。
今でも怖い病気ですが、小さいうちにワクチンを打つので流行することは無くなりました。
それと共に、お参りする人もいなくなったのでしょう。



百日咳の信仰以外にも、ヒキガエル型の岩は各地にあったようです。
芸西(げいせい)村の『蟇石(びきいし)』は、山で生活する人々の目印となっていたようです。
昔の地図を見ると、小字として「蟇石」「上蟇」「東蟇石」と出ているそうなので、かなりの存在感だと思います。

門脇鎌久さん著『広報芸西コラム全集』に、所在不明になっていた蟇石を探しあてる話が出ていましたよ。



そして、大川村のHP『でぃぐ!大川村』に「おんびき神様」なるものを発見。
やはり百日咳の神様なのかしら。

ものすごく気になります。

『でぃぐ!大川村』おんびき神様のページ




気になって仕方ないので、『でぃぐ!大川村』さんに問い合わせてみました。
すると、丁寧に答えてくださいました。嬉しい。
HPもおしゃれなので、行ってみたくなります。→『でぃぐ!大川村』




何はともあれ、まずは「おんびき神様」に行ってみたい。

高知市はそれほど雪が降りませんが、山間部はそうでもありません。
雪も降るし、道も凍ります。
なので、寒い時期は自粛して暖かくなってから行ってみました。




大川村といえば、かつての村の中心部が早明浦(さめうら)ダムに沈んでしまった村なのです。
四国の水瓶と言われるだけあって、大きなダムです。
しかし、水不足になると大川村役場がダムの底から姿を現します。

ちょっと切ない風景。




そのダムができる前の話。
吉野川の中洲のような場所に石があったのだそうです。
大水が出ても流されないので、「願い事をすると叶う」と言われていたのだそう。

それが「おんびき神様」の石。
そして、ダムに沈む時に、その石を移動して祠を作ったということでした。

『土佐町史』によると、高さ1.5m、長さ3mほど。

なかなか大きいです。




行ってみると、「おんびき神様」は県道17号線沿いにある小さな祠さんでした。
カエルの絵の看板が出ています。
見逃すと、Uターンがちょっと難しいのでご注意。

祠さんのそばに、それらしき石を見つけることはできませんでした。
でも、お酒やお茶が供えられているので、お参りにくる方がいらっしゃるのでしょう。
看板にも、『おまいりに来てください』の文字が。
なんだか愛おしくなりました。




こっち方面に住んでる知り合いに聞いてみると、みなさん『おんびき神様』知ってました。
石を覚えている人もいました。
足があって、四つん這いに見える石だったそうですよ。




現在「おんびき神様」、住所はお隣の土佐町になるのだそうです。
でも、管理を含めお祀りしているのは大川村の方々なのだとか。
慕われているのですね。




県道17号線は、切り立った山肌に作られたような道路で、ガードレールから覗き込んだらゾワッとするくらいの高さ。
そして、下に見えるのはダム湖です。
チキンなので、足がすくみます。
ダム湖って、なんでこんなに怖いんだろう。




『おんびき神様』は、百日咳の神様ではなく、願いを叶えてくれる神様でした。
でも、床下のヒキガエルのご利益を考えると、そんなに不思議でもない気もします。
今回は大川村まで行けませんでしたが、次の機会には行ってみようと思います!

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