7. 『おさばいさま』って何の神様?


高知の田んぼの中や畦に、小さな祠があることがあります。

この祠は『おさばいさま』と呼ばれていて、田の神様です。


私の育ったところは古戦場があり、亡くなった方がいた場所に建てられているのだと聞かされてきました。

おそらく長宗我部元親公の時代の古戦場です。
そんなこんなで、『おさばいさま』の祠は動かしてはいけないとされています。
動かすと良くないことが起こるらしいです・・・


お酒を飲んだら前を通ってはいけない、といわれていた『おさばいさま』もあるそうですよ。
引っ張り込まれるからだとか。
お酒好きの高知県民には、ちょい難しい話かも。


高知市の針木のホノギに『七作倍(ななさばえ)』というのがあって、祠が七つあったそうです。
なので、『おさばいさま』も「お作倍さま」と書くのでしょうか。
農業の神様らしい漢字です。
つつがなく育ってくれますように。



鹿児島あたりに座す『田の神さぁ』と『おさばいさま』


春は、田植えの季節です。
高知の田植えは4月から5月上旬。
台風が来る季節の前に刈り入れをするためなのでしょう、少し早めです。


お米は、日本人(だけではないですが)が育ててきた美味しくお腹いっぱいになる為の、知恵と工夫です。
保存もできて、火と水で調理ができ、おかずがなくても食べられるんですから。
それに、結構強い植物なのだそう。
飽食の時代なので気付きにくいですが、よくできた作物だと思います。



昔はお米が不作となれば、命を脅かす大問題。
(今だって困るんですけどね。)
だから、稲の苗を作る日や田植えの日に、『おさばいさま』や『田の神様』にお供えをして豊作を祈願します。
田んぼの取水口にお供えしたりするので、『水口祭』と呼ぶところもあるようです。



土地によってさまざまな呼び方、それぞれの祭り方があるようです。
高知市のとある田んぼで見せてもらったのは、苗床を作る日。

種まきして田植えができる大きさまで稲を育て始める、つまりその年のお米を作り始める日です。

お神酒と小魚をお供えして、横に柿と栗の枝を立てていました。
柿は「掻き込む」、栗は「繰り込む」という語呂合わせだということです。
栗の枝を立てるところは多いようで、神様の依代なのだと聞いたことがあります。
他にも、石や椎・杉などの樹木を依代にしたりするようです。




同じ高知市でも、そういうお供えはしないという方もいます。

でも、『社日』をするのだと教えてくれました。
「社」って土の神様なんですね、字の如く。
Wikipediaによると、春分、秋分に最も近い戊(つちのえ)の日に、産土神(生まれた土地の守護神)を祀る日なのだそうです。
知らないことが、いっぱいあります。



豊作を祈願するのは、はるか昔から存在する素朴で大切な祈りだと思います。
人間が農耕をする限り、続く祈りなのでしょう。
(NHKみたいな、壮大なまとめかた)

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