5. 猫派と犬派 〜おいどんは犬派でごわす の巻〜

 猫派か犬派か。

時々聞かれる質問です。

民俗学の世界の猫と犬は、どんな感じでしょうか?
猫派に引き続き、犬派を探ります。



犬の怪異の話は、本当に少ないです。
あっても、飼い主のために妖怪と戦う忠犬の話ばかり。
なんでも、犬は1万5000年も前から人間に飼われていたのだとか。
猫の9500年前からに比べると、かなり長いです。


例えば、昔の漁師さんは四ツ足の生き物を嫌がった、という話はあります。
犬も、もちろん嫌がられたみたいです。

「犬」と言う事さえ嫌って、隠語(あだ名みたいなもの)で呼んでいたところもあるそうです。



あと、まろ眉とも言われる『四つ目』の犬は、年配の方の中には縁起が悪いと敬遠する人もいるのだとか。
でも、うちの愛犬も『四つ目』なのでこのジンクスはノータッチで行こうかな 笑
「四つの目で見張ってくれるので、縁起がいい」としているらしいモンゴル説を信じることにしています。



そんな中、唯一怪異っぽいものといえば、犬神。
狐や蛇など憑き物の話は全国にありますが、四国は主に犬神です。
取り憑かれると熱が出てうわごとを言い、動き回る姿がまるで犬みたいなのだそう。



そこで朗報。

松山秀美さん・寺石正路さん著『土佐伝説全集』には、犬神に悩まされた時の対処法が。
岡山県の犬島にある、犬の形の石にお参りすると良いと出ています。



犬島・・・?
どこかで聞いたことがあるような・・・?



それもそのはず。

犬島といえば、妖怪イヌジマ。

高知のアーティスト石井葉子さんが作る、怖かわいい妖怪です。


妖怪イヌジマ


今ではすっかり定着した、瀬戸内国際芸術祭。
瀬戸内のアートが動き始めた頃、2005年に犬島で生まれたのが妖怪イヌジマ。
今は美術館になっている銅の鍛錬所が、まだ廃墟だった頃だそうです。
その廃墟の黒い砂で出来ている目が、虚ろなようで、でもキラキラしていて愛らしいイヌジマです。
送られた先で住み憑き、今や全国至るところに住み憑いてるんですよ!

興味ある方は、コチラ→ https://inujima-sumitsuki.tumblr.com



この犬島が、これまた面白い島なんです。
菅原道真公が、筑紫に流される途中で船が遭難、犬の声に導かれて辿り着いたのが犬島だったとか。

このエピソードが島の名前の由来だそうですよ。



枕草子にも犬島の名前があるそうで。
一条天皇の愛猫 “命婦のおとど”を、とある女房にけしかけられた扇丸という犬が、噛もうとして命婦のおとどは大脱走、扇丸は島流しに。
島流しになった先が、この犬島だった・・という説があるそうです。


御影石が取れて、取っていくうちに島がぺちゃんこになってしまったとか。
貝塚や古墳があるとか。
エピソード満載。


このあたりの島はだいたい香川県なのですが、犬島は岡山県。
それも、ちょっと興味深いです。


そして、神社。
昔は犬島にあったそうですが、今はすぐお隣の犬ノ島に、犬石明神としてお祀りされているそうです。
会社の敷地になっていて年に一度5月3日にお参りできるようなのですが、ここ何年かは出来てないようですね。
機会があったら、行ってみたいです。



結局、妖度では犬は猫には到底およびませんね。
どうですか?

さっぱりした犬が好きですか?
それとも、少し妖しい猫が好きですか?

コメント