91. 謎の昔話と、おちよ地蔵

 

高知市をの真ん中を流れる鏡川。

昔は坂本龍馬も泳いだらしいですぜよ。

龍馬の辺りより西にある鏡川橋の少し上流に、大きなイチョウの木と2体のお地蔵さんがおわします。

人柱になったおちよさんを祀る『おちよ地蔵』です。




その昔、大雨で鏡川が氾濫するとここにかけた橋が流されてしまうのだそうです。

どうしても橋をかけることができません。

困った村長さんと村人たちは相談して、人柱を立てようということになりました。

村長さんは、

「今から一番初めに来た人を人柱とする」

と言いました。

村長さんは、自分の娘がお弁当を持ってきてくれる時間であることがわかっていました。

そして時間通り娘さんがやってきたのです。

娘さんも父の思いを汲み、人柱になりました。

それからというもの、橋は壊れなくなりました。

人々は、供養のためにお地蔵さんを立てたということです。




      みたいな話を、のどQは小学生の頃に母から聞きました。

その村長さんの覚悟と娘さんの自己犠牲がやたら琴線に触れて、この話を思い出して何度涙ぐんだことでしょう。

人柱なんて想像を絶する恐ろしさだし、自分だったら泣き叫んで父を恨みます。

村人の誰かにその重荷を負わせまいとする二人の献身が、気高く思えたのです。

この付近を通るたびに村長さんの娘を思い、胸がいっぱいになっていました。




昨年の秋、『おちよ地蔵』さんの横のイチョウがあまりにきれいだったのでふらっと寄り道。

村長の娘さんを思いながら、しばしイチョウに見とれます。

木の下にはきちんとした地蔵堂が建てられていて、お地蔵さんが二体並んでおりました。

大事にされているようで、よかったよかった。

そんなことを思いながらお地蔵さんの由来に目をやりました。




・・・・おや?




そこには、こんなお話が       

140年ほど前、この辺りは大雨のたびに決壊し、ひどい水害に悩まされていました。

ある年、水神さまを鎮めるために人柱を立てることになったのだそうです。

そこで選ばれたのが13歳のおちよでした。

おちよはお母さんと二人で暮らしており、後々までお母さんの面倒を見てくれるならという約束で人柱に立ちました。

しかし、歳月が流れると村人たちは約束を忘れ、お母さんは一人寂しく亡くなってしまいました。




ある年の夏、大雨が降り鏡川があふれて村は大きな被害を受けました。

「ちよのお母さんを放っておいた罰が当たったのではないか」

誰いうともなく、そんな話になりました。

そこで村人たちは、二人の霊をなぐさめようと二体のお地蔵さんを千代ばねの見える堤の上に建てたということです。

※千代ばねの『はね』とは、水の勢いを和らげ流れをととのえる石や杭でできた工作物のことだそうです。




向かって右がお母さん、左がおちよさんだそうです。

母子地蔵は全国的にも珍しいとのこと。

県内ではここ一か所だといわれているそうです。

それにしても、13歳で人柱だなんて。




じゃなくて、話が全く違んうんですけど!

あんなに涙ぐんでいたのに、あのエピソードはどこ行った?

違うお地蔵さんのエピソードなのか?

確かに、おばちゃんというものは思い違い・勘違いがすこぶる多い生き物なのだが?

母の勘違いなのか?

イチョウの木の下に呆然とたたずむ夕暮れ。

静かに微笑む『おちよ地蔵』さんたち。




謎のままの昔話。

どこかで見つけたら、また報告します!




おちよ地蔵さんの横のイチョウ、見応えがありますよ。

紅葉の季節は見事です。

鏡川沿いなので気持ちがいいですよ。




参考文献 : 北方資料デジタルライブラリー『石狩川の水刎(みずはね)枠』


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