53. くす、クス、樟、楠 〜大谷の樟〜

 

須崎の大谷というところに、大きな樟の木があります。

須賀神社の境内にあるのですが、これがものすごく大きいんです。
そして、なんと国の天然記念物。

推定樹齢は、1300年とか1500年とか2000年とか・・・あれ?

書かれてるものによってバラつきが。
諸説あり、というやつですかね。

大正13年に天然記念物に指定されたんだそうですよ、ほぼ100年前。
人間からするとはるか昔ですが、樟の木からするとちょっと前くらいなのか?



大谷の樟


病気になった人がお参りに行く、霊験あらたかな木だという話を聞いたのでノコノコとやってきた次第です。
海が近いのかな、と感じる気持ちの良い風景。
この大谷地区と、海側の野見地区の産土神様だということです。
野見地区からの風景も素敵ですよ。




野見湾の風景



樟の木の足元部分から大きな空洞があって、その中に『楠神』様と呼ばれる小さな祠があります。
病弱な幼児を持つ親が参拝し祈願すると健康に育つとか、病弱な者も健康になると伝えられているそうです。
安産祈願に訪れる方もいるそうですよ。
確かに、いろいろ聞いてくださりそうな包容力を感じます。
神様にあやかって「楠」の字を使った名前をつける事もあったようです。
熊楠・・・とか?


この中に楠神様が



須賀神社、もとは牛頭天王と呼ばれていたそうです。
明治元年に須賀神社になったのだとか。
牛頭天王って、疫病退散で有名な方ですよね?

昔から、病気平癒祈願で皆が訪れていた場所ということでしょうか。





『楠神』と聞いて思い出したことがあります。

越知町という町があるのですが、人里離れた場所に行列のできるラーメン屋さんがあるんです。
そこに向かっている時に、『楠神』という地名がありました。
もう言い伝えの香りしかしない地名。

しかし、お腹が減っていたのでスルーしたんですよね。
もったいないことをした。




『土佐史の神々 第二集』という本に見つけましたよ、越知の『楠神』の言い伝え。
その昔、この地に大クスの木があって、その辺りを真っ暗にするほど茂っていたのだそうです。
ある人が、その木の枝を長い時間かけて伐り落としました。
が、翌朝行ってみると、元通りになっていたのだそうです。
今度は根元から伐り倒したところ、集落に相次いで不幸なことが起こりました。
そこで、祠堂を建てて『楠神』様として祀るようになったのだそうです。
集落名も『楠神』となったということです。




最近、自分の記憶装置が作動しているのか心配していましたが、『楠神』地区を思い出したということは大丈夫そうですね。
『楠神』様、ありがとう。



あとひとつ、気になる樟の木が。
中土佐町の久礼八幡宮の樟の木です。
そういえば、厄抜け石の後ろ側に御神木があったような。

厄抜け石についての記事はコチラ



ある時、樟脳(しょうのう)を取ろうと樟の木に斧を入れたところ、その木片ひとつひとつに『八』の字が現れたのだそうです。
それから人々は、御神木として恐れ崇めたということです。



不思議な話です。
ひとつひとつに現れたら、気になるかもなあ。
『八』じゃなく『四』だったら、もうホラーですね。




それにしても、樟脳って樟の木から作るんですね!
初めて知りました。
樟脳って、今でいう『タンスにゴン』みたいなもの、防虫剤です。
クスという名前は「臭し」と同源か、と広辞苑に書かれています。

今度匂ってみなきゃ。



『樟』なのか『楠』なのか、よくわからないままお届けしてきました。
『楠』は、「南国から渡来した木の意」と広辞苑には書かれています。
大谷の樟に至っては、神様になると『楠』になるのも面白いというか。
よくわからなくなって、結局『クス』ってカタカナで書いてしまうことも多くなるんだろうな。




そういえば、トトロも樟の木に住んでましたね。
生長は遅いけど、大木になる樟の木。

巨木って、やっぱり崇めたくなります。
日本各地で崇められているのかと思いきや、関東南部から西にしか生息してないという衝撃事実。
トトロの樟の木も、生息地ギリギリだったりするのかも?(アニメと現実を混同)



参考文献 / 広谷喜十郎さん著『土佐史の神々』『土佐史の神々 第二集』
     『須崎市史』『広辞苑』『wikipedia』


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