24. 奥物部へ 其の一、いざなぎ流企画展


民俗学の小松和彦先生の著作により全国区に知られることになった、高知県物部に伝わる民間信仰、いざなぎ流。

小説やコミック、映画などの創作媒体で「陰陽師」が流行した頃からでしょうか。陰陽道の要素たっぷりのいざなぎ流は国内外のマニアから熱烈な視線を集めるようになりました。

物部を擁する香美市は、このいざなぎ流を自治体単位で全面的に推してます。いざなぎ流の伝承者である森安太夫を筆頭に、香美市主宰のイベントで御幣切りワークショップを開くなんてこともありました。この文を書いている私はワークショップに参加すること二回、五年前の「日月祭」に偶々参加すること一回。いざなぎ流に魅せられた人々の末席でうろうろしている一人であります。

先日、竜笛奏者の方からいい情報をもらいました。奥物部美術館でいざなぎ流企画展をやっていると!


ということで早速、とさみみ部員同士(日月祭に参加経験のある者同士)で車に乗り合わせて、遥々奥物部へやってきました。写真展示以外撮り放題、山のような御幣の数々。垂涎。

山の神の御幣。小刀で、下書きも目印もなく美しい形を切り取るには長年の熟練がいる。

 
十二のヒナゴ。日月祭の祭場は注連縄で囲われ、その四方に三つの顔を持つヒナゴが飾られ、注連縄の中に悪いものが侵入してこないように、にらみをきかす。※展示説明文より。
日月祭会場に行った際、混雑していたので小高い場所で見学しようとしていたところ、この場にいる者はヒナゴが飾られた場所より頭が低い場所になければならないと教えて貰いました。

御幣は自然の精霊をかたどる重要な依代です。これをワークショップで作った時、太夫さんに言われました。

「祀ったらしまいやき、せれらん。」

祀ったら最後まで面倒みなければならない羽目になるから、拝むな、祭壇に飾るな。子どもの遊び道具としておいておくならまあ良しと。ただ、山や水の神の幣は、それでも室内には置くべきでないという解釈をされる太夫さんもおられて、意見は太夫によっても異なる様でした。

当時、ワークショップ一回目に私が作った恵比寿と天神の御幣は、完成して机を離れたわずかな間に何者かに盗まれるという事件が発生、その後太夫さんが同じ弊をその場で作ってくださったというありがたい曰く付きでした。(数年後、二回目に作った御幣を持ち帰ってきたときにお焚き上げしました)
 
中央が「めんたつ」その左が「おんたつ」。 ワークショップ参加者の中でも「怖い」か「かわいい」かで感想がまっぷたつに割れた、水の女神と男神の御幣。私は「非常に怖い」派。ここに載せる作業をしてるのも実は怖い。夜にはせられん。 ちなみに同行した部員は「かわいい」派でした。お互いに何を受信してるんやろうね〜
 

この展示では御幣や祭壇の数々はもちろんのこと、解説文が過去のいざなぎ流展示の中でも群を抜いてわかりやすく、知らない人にこそ門戸を大きく広げていた気がします。解説文のリストだけ下にあげておきます。興味のある方はぜひ現地へ。 
 
1、いざなぎ流とは? 

2、山川に棲む神霊たち

3、病人祈祷

4、スソの取り分け

5、式王子の力

6、家の神々と祭り

7、家祈祷(やぎとう)とすすばらい

8、神楽と舞神楽



さてこの奥物部、もう少し行くと紅葉の名所べふ峡に差し掛かります。

15年前のいざなぎ流日月祭を行った神社はそのべふ峡の入り口あたりにありまして、ついでにそこまで行くことになりました。続きはまた次の記事で!
 
(文・シバテン) 
 
 

コメント