4. 猫派と犬派 〜我輩は猫派である の巻〜

 猫派か、犬派か。

時々聞かれる質問です。

民俗学の世界の猫と犬は、どんな感じでしょうか?
少し探ってみましょう!



命が9つもあるなんて言われる猫。
猫股、化け猫、猫娘。
怪異の世界では、主役級です。



瞳孔が縦に長いと怖く感じるのでしょうか。
猫、蛇、狐・・・人に取り憑く、と言われる動物は、瞳孔が細いんですよね。
ネットでチラッと見かけた宇宙人も、瞳孔が縦長だったような。
パンダやうさぎだと迫力に欠けるのでしょうか。



小さい頃、宿毛(すくも)市にあった祖父母の家では、夕方暗くなって来ると「マモカが出るから早く家に入りなさい」と言われたものです。
怖ーいマモカが出るよ、と。
昔話や絵本にも全く出てこない、正体不明の妖怪マモカ。
夕刻になると、時々思い出します。



マモカと検索しても出てこない。
それでも調べてみると、『土佐お化け草紙』と言う江戸時代中期の古い書物に出てくる「まもう(まもふ)」が元になっている可能性が。
流れるような筆字なので読めませんが、『猫股』と書いてあります。

『土佐お化け草紙』の、まもふ

その絵は、ファンキーなおじさん、といった風情。
ひたいに缶をくっつけちゃいそうです。
まさかの、猫要素なし。

高知歴史民俗資料館に『土佐お化け草紙』を展示してくれてるんですが、『赤猫が歳を取ってくると、このようになる』と書かれていました。

やはり、猫なのか。

猫股、深いです。



出どころを忘れてしまったのですが、印象に残っている話です。
高知の山深い村のことです。
深い淵のある川が流れていて、岩と岩に板を渡しただけの橋がありました。
ある日、女の人が赤猫を懐に入れてその板を渡っていたら、猫もろとも落ちて亡くなってしまいました。
その日から、そのあたりで赤猫を見るようになったそうです。
そして、赤猫を見ると、決まって悪いことが起こるように・・・


この話で何が恐ろしいって、板だけの橋です!
山の奥の淵、渦でも巻いてそうな深い淵。
その上に板を一枚・・・・
赤猫そっちのけで、この橋が怖い。
安心できる橋があることに感謝しかありません。


現代で言えば、『黒猫に前を横切られると悪いことが起きる』に通じるものがありますよね。


少し前までは、自分の家でお葬式をしていました。
遺体を置いた部屋に、猫を入れてはいけないと言われていたそうですよ。
猫が遺体をまたぐと、がばっと起き上がったり、生き返ったりするからだとか!



またのお越しを・・


そこで猫が入らないよう見張りをするのはもちろん、障子の穴もふさいで準備したそうです。
棺に入ってからは、特に注意が必要らしいです。
もしも起き上がったら、「箒(ほうき)でたたくと又死ぬる」とのこと。
そのために、死室に箒を逆さに立てておくのだそう。
だから普段の逆さ箒は縁起が悪いとされるんですね。
(物部村(ものべむら)の佐川清水さん著『御葬式の事』より)



『とさみみ』メンバーのおばあちゃん(100歳)の家に、ある日猫がやってきました。
そして、当たり前のように住み付いてしまったそうです。

この猫ちゃんは福猫か、それとも・・・



犬派は、この次に!


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