61. 寸劇『りゅうきゅうは盗まれた』

 りゅうきゅうは、盗んで植えんとありつかん ──────



田舎に伝わる俚言には、ときどき物騒なものもあります。

コンプライアンスが厳しいこの頃。

こんなこと子供に教えたりなんかしたら、大問題になりそうな予感。



まず、りゅうきゅうというのはハスイモという植物のことです。

高知では、割とメジャーな食べ物です。

茎がスカスカとスポンジ状になっているのですが、その部分を酢の物などにします。

高知には、日曜市などで人気の『田舎寿司』なるものがあります。

にぎりのネタが、ミョウガやたけのこなどの山の幸です。

りゅうきゅうは、その田舎寿司の定番メンバー。

田舎寿司は酢がよく効いているので、思い出すだけでよだれが。

手間のかかった田舎寿司は、見た目もとてもきれいです。

高知に来られた時は、ぜひ。




りゅうきゅうの季節は、夏から秋にかけて。

絵本などでカエルさんが傘の代わりにする大きな葉っぱ、あんな感じです。

スーパーなどでは切って売られていますが、日曜市などでは長いままだったりします。

小脇に何本かかかえて歩く姿はちょっと不思議な光景ですよ。




つい最近、高知県西部のスーパーで『ついも』と書かれているのを発見。

高知全域で『りゅうきゅう』かと思ってました。

そんな呼び方もあるんですね。




そのりゅうきゅう、盗んで植えないとありつかないって言われているんですって。

「ありつく」というのは、根付くという意味です。

盗んで根付くのなら、普通に植えてもいけるだろう・・・




しかし、昔から言われているからと、小芝居が行われたりするんですよ。

「りゅうきゅう、もろうてもかまん?」

と先に断っておきます。

そして、誰もいない時間にこっそりいただいていく。

いったい、何に対するアピールなんだろう。

神様か?りゅうきゅうか?

少し前にもその寸劇が行われているところを目撃。

「じゃあ、後で盗ませてもらうき」

あの“盗んだ”りゅうきゅう、ちゃんと根付いたかしら。



なぜ、そんな俚言ができたのでしょうか?

俚言には、おまじないっぽいものもたくさんありますよね。

ムカデが出たら唱える呪文とか。

りゅうきゅうも、ただのおまじない?




そう思ってりゅうきゅうを観察してみると、家の裏手とか、陰地ではない谷間とかに植えられていることが多い。

自分の家で食べる分だけなのでしょう、ひと株だけポツンと植えられていたりします。

逆に日当たりが良すぎるところのものは、葉っぱが黄色くなっているような。

つまり、りゅうきゅうはコソコソした場所がお好きなのか??




盗んできたら、ひと目につかない場所に植えますよね。

それこそ、家の裏とか。

高温多湿で育つりゅうきゅう。

ひっそりした場所が合っているということなのか。

『盗んで植えんとありつかん』

つまり

『盗んできた気持ちで植えると良い』

ってことを伝えたかった?

ふふふ、あくまでも、仮説なんですけどねー。




夏に気持ちよく食べられるりゅうきゅう。

タチウオと相性抜群らしいです。

りゅうきゅうは、クワズイモの葉っぱとよく似ています。

クワズイモは毒草なので絶対間違えないように!

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