35. ただ無事を願う

 明治以来の戦争ごとに、徴兵よけと無事帰還を祈る家族たちの信仰を集めた───


桂井和雄さん著『生と死と雨だれ落ち』より




岐(ふなと)神社について書かれたものです。
仁淀川の下流、春野町西畑(さいばた)に鎮座されております。

河口近くの仁淀川の流れは、ゆったりとした美しさ。
その側にある西畑地区も、穏やかな風景です。
西畑は、デコを使った人形芝居でも有名なんですよ。






徴兵よけと無事帰還、その祈り方が少し個性的。
草履やワラジを一足分持っていき、片方だけを奉納して祈願します。
もう片方は家に置いておきます。
そして無事帰還した時に、神社に持って行き奉納するのだそうです。
どれだけの人がワラジに願いを込めたことでしょう。
どれだけの人がもう片方を持ってこられたのでしょうか。
胸が痛くなるくらいの願い。




そしてまたひとつ、戦争が始まりました。
また、こんな思いをする人がいるのかと思うと憤りしか感じません。
そして、これ以上戦火が広がらない事を願うばかりです。




もともと、「ふなとの神様」というのは分岐点、峠、村境などに祀られていて、外から悪いものが入ってこないよう防ぐ神様とされています。(Wikipediaより)
そして、旅行の神様、道中の安全を願う神様とも言われています。
岐、船戸、舟戸・・・漢字は違えど、確かに時々聞く地名です。




25年くらい前、『津野山神楽を見に行くツアー』というのがあって参加したことがあります。
その時引率してくれた先生が説明してくれたのを覚えているんです、『ふなと』について。
でも、肝心の内容を覚えてないんですよ・・・
クナドとか、境とか、峠とか、そんなイメージだけは頭に残っています。
メモしておけばよかったなあ。





岐神社には、今でもワラジがいくつか吊るされていました。
市原麟一郎さん著『伊野・春野伝説散歩』には、「宇佐(うさ)の漁師が航海安全を祈ってお詣りにくる」と書かれています。

漁師さんはじめ、確かに無事の帰還を願う人はいつの世にもいます。

心の拠り所があるのは、ありがたいことです。




岐神社に、吊るす場所がないくらい、ワラジがいっぱいになるような世の中になりませんように。




さすが、人形芝居が有名な地区だけあって、面白い話がまだありそうです。
また行ってみなくては。

コメント